第4回講演会



 


NPO法人 スーパーコンポジット研究会 

第4回 講演会 2009 年9月11日に開催しました。
多数のご参加ありがとうございます。


日 時 : 2009年9月11日 10時〜17時
場 所 : 東京工業大学大岡山キャンパス南8号館6F



プ ロ グ ラ ム

10:0010:45 総 会

 「スーパーコンポジット研究会の活動状況報告」 瀬野 武 理事・事務局長

 「自然をめぐりながら考える(2)」            由井 浩 理事長

<座長 瀬野 武>

10:5011:50 講演1 東京大学・先端科学技術研究センター 助教 安藤 規泰 氏
昆虫に学ぶ環境適応性

<座長 由井 浩>

13:0014:30 特別講演 東京工業大学大学院教授 住田 雅夫 氏
「カーボンナノフィラーの自己組織化による導電性回路の形成とそのメカニズム」

<座長 住田 雅夫>

14:4015:40 講演2 東京農工大学教授 斉藤 拓 氏

「超臨界法による高分子の高次構造制御」

<座長 八代 啓一>

15:4516:45 講演3 横浜ゴム(株)顧問(元取締役研究本部長) 溝口 徹也 氏

「ゴム複合材料の過去・現在・未来」

●なお、講演会終了後、交流会を行いました。





●講演会レポート

<講演1> 「昆虫に学ぶ環境適応性」
        東京大学・先端科学技術研究センター 助教 安藤 規泰
生物を模倣し工学として応用する技術「バイオミメティクス」は,幅広い領域で注目されています。しかしこれまでは,生物のもつ形態,素材に関する研究例が多く,動物の行動発現に関わる感覚―運動についての研究例は少ないと言われています。その大きな理由として,動きの模倣のみで背後にある神経系の生み出す「環境適応性」に対する理解が充分でないことが挙げられています。
恐竜や大型の哺乳類が環境の変化に適応できず絶滅していったことと対照的に,昆虫は3億年以上前の太古の歴史からその姿をほとんど変えることなく今日に至っています。昆虫のもつ,優れた環境適応性とは何だろうか,どのような特質があるのだろうか。そのような問題意識で昆虫の適応性をさまざまな実験により解析・評価していくことで,工学的再現をめざす。安藤先生の属する東京大学先端科学研究センターの神埼−高橋研究室のテーマです。講演では,昆虫の適応行動について,カイコガを例として興味深い行動分析を紹介されました。

<特別講演> 「カーボンナノフィラーの自己組織化による導電性回路の形成とそのメカニズム」
        東京工業大学大学院教授 住田 雅夫
住田先生は,長年,カーボンブラック,気相成長炭素繊維(VGCF)などのカーボンナノフィラーの自己組織化による導電性回路の形成とそのメカニズムについての研究を行ってこられました。今回は,東工大における永年の研究成果の集大成を講演いただきました。
フィラー充填高分子の特徴は,その構造の不均一性により,フィラーの体積分率だけでなく,分散状態に大きく影響されることはよく知られています。カーボンブラック (CB : carbon black) ,気相法成長炭素 (VGCF: vapor growth carbon fiber) ,カーボンナノチューブ (CNT) などのナノオーダーの粒子サイズや粒子径を有するナノカーボンを溶融高分子と混合すると,3次元の粒子間ネットワークを形成します。これらのナノカーボンは導電性を有しており,成形されたカーボン分散系樹脂は,ネットワークを形成する充填量で絶縁体から導電体に変化します。このように,樹脂マトリックス内である充填量を境に絶縁性から導電性へ抵抗率が急激に転移する現象をパーコレ−ションといい,臨界のしきい値をパーコレーションスレッシュホールド (P.T.) と呼びます。興味深いことに,このしきい値以下の充填量の樹脂でも,複合樹脂を溶融状態で保持すると,特定の保持時間で絶縁体から導電体への転移が起こります。
先生がこれまで行ってきたダイナミックパーコレーションの研究,機能材料としてのナノカーボン分散系樹脂を展望,未解決の問題などについても詳しく紹介されました。未解決の課題としては,ダイナミックパーコレーションについて定性的には説明がつくものの,定量的な評価が非常に難しいことを挙げられ,そのためには分散状態の定量的なキャラクタリゼションーが不可欠であること,解明の一つの方向はレオロジー特性から見たネットワーク形成メカニズムとの対応にあることなどを挙げられました。

<講演2> 「超臨界法による高分子の高次構造制御」
         東京農工大学教授 斉藤 拓
超臨界流体は、気体と液体が共存できる限界の温度・圧力(臨界点)を超えた状態にあり,通常の気体,液体とは異なる性質を示すユニークな流体です。“どこにでも忍び込む”気体の性質(拡散性)と,成分を溶かし出す液体の性質(溶解性)を持ち,かつその密度を連続して大幅に変化できる特長を持つことから,最近その応用展開が進んでいます。斉藤先生の研究室では,超臨界二酸化炭素(7.3MPa,31℃)を利用してポリマーの強高度化,耐熱化,汎用プラスチックのエンプラ化,さらにポリマーの高次構造の制御など,新素材創製の可能性を追求されています。本講演では,その具体例を豊富な写真を示しながら紹介されました。

<講演3> 「ゴム複合材料の過去・現在・未来−タイヤ材料技術の動向−」
       
横浜ゴム褐レ問(元取締役研究本部長) 溝口 徹也
 
鳩山首相がCO2 の排出を90年比25%削減することを発表して以来,あらためて環境問題に対する関心は高まっています。自動車においても,昨今は電気自動車,ハイブリッドなどが話題にあがることが多いのですが,自動車の省エネに大きな役割を果たしているのがタイヤの性能です。
 タイヤ産業はいち早く,低燃費タイヤの開発に取り組んできました。一見黒いゴムの塊にすぎないタイヤですが,実は様々な部材で構成されており,しかもその部材に用いられるゴムもまたさまざまな材料が混ぜられたコンポジットです。1本のタイヤには100種以上の材料が使われているといいます。
 タイヤの低燃費化の流れをみると,1980年代にはカーボンブラックメーカーとともに新材料の開発が行われ,90年代に入るとシリカ配合による低燃費化が進められてきました。
 さらなる低燃費化を図るために,タイヤはどう変わっていくのか,また電気自動車,ハイブリッドカーにおいても,タイヤは不可欠ですし,車の性能を生かすも殺すも実はタイヤが重要な役割を担っています。現在乗用車用タイヤの多くは,合成ゴムが使われていますが,地球環境を考えると,あらためて天然素材である天然ゴムの見直しも重要になってきます。


     第4回講演会については詳しいレポートを四季報 No.13に掲載しました。
        こちらからご覧ください。四季報13 第4回講演会レポート






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